
お宅に直接お邪魔する出張買取では特に、これまで集めていたものを手放すという決断をされたお客様の背景や思い入れなどを感じることは多々あります。今回は、その中でも記憶に強く刻まれている出張買取のエピソードです。(代表の印象に残った出張買取のエピソードを取材し、プライバシーが守られる範囲で記事化したものです。)

もう10年ほど前のことでしょうか。とある地方のお宅から、出張買取の依頼が入りました。現地に到着しインターホンを押すと、出てこられたのは明らかに弱々しい姿の男性。少し辛そうな様子もあったので心配してしまいましたが、受け答えははっきりされています。お宅の中には、真新しい仏壇と、そしてお母様と思しき遺影が飾られています。
男性が処分したかったのは、グラビアもののDVD等でした。そこそこの量をコレクションされていたようです。
いつものように品物を確認し、大切にトラックに積み込みます。

そして出発しようとした時。
「これを・・・」
男性の手には、しわくちゃの五千円札が握られていました。
買取をする立場の私へ、お客様からときどき「お茶代」として謝礼をいただけることがあるのですが、五千円もいただくのは初めてで、とても驚きました。なぜ五千円札をくれたのか、その理由を伺っても「いいからいいから、何か旨いもんでも食ってください」と。お断りしようとも「気にしないで受け取ってください」と渡されてしまうので、ありがたく頂戴することにしました。

買取点数が多かったこともあり1点1点査定しているうちに、約2週間が過ぎていました。査定金額がようやく出揃ったので、男性に電話でご連絡。すると、電話をとったのは明らかに別の男性。その方は、男性の親族と名乗っていました。
「こちらの男性は、すでに亡くなりました。」
あのしわくちゃの五千円札。どんな思いで渡してくれたのでしょうか。
今や知るすべはなくなってしまいました。
お母様の元へと無事旅立って行かれたと信じています。
実は特に男性で、生前整理としてグラビアやアダルト系の品物を売却される方は多くなっています。やはり死後でも、家族や親族には見られたくないものだと思います。今回も、家族や親族等に見られることなく、きっちりと買取・処分をさせていただくことができました。自分に託された責務は全うできたかなと思うと、少し肩の荷が下りたような気がします。
※文中の写真はイメージです